計測でも科学でもない数値の強調と人の健康
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計測でも科学でもない数値の強調と人の健康
高原の秋は早い ミズナラと共生するツタが黄葉した。ミズナラも黄葉であり、黄葉の饗宴であった。10月18日撮影。
計測でも科学でもない数値の強調と人の健康
(本文)
爪楊枝(ツマヨウジ)の先にわずかに付けたほどの成分を飲み干すために風邪薬の錠剤ほどにすると、その成分の割合は1%に過ぎない。錠剤サプリの機能性表示食品の多くはこのようである。機能性表示食品の市場は1兆円とも2兆円ともいわれる。つまり日本人は国民一人当たり千円から二千円の出費をしている。
薬効が確かめられている物質は医薬品として登録される。医薬品は医師の診察にもとづいて投薬される。ビタミンやミネラルは効果が明らかな栄養機能食品である。効果を検証し国が認可したのが特定保健用食品(トクホ)である。
安倍晋三内閣は上記以外の領域として機能性表示食品の制度を新設した。製造者の責任で効果について、その事実を示して世に問うという仕組みであり、国の認可ではない届出制の仕組み。ほかに従来からの健康食品があり、この領域は効果や効能の事実が明らかでない食品。規制改革後には特定保健用食品(トクホ)は増えず、機能性表示食品が爆発的に増大した。テレビ、ラジオ、SNS、ほかで大宣伝されているのが機能性表示食品であり、製造者が効果に関しては事実を示して世に問う仕組みのもとで販売する食品。
バラ科の木の実のアーモンドが膝痛に効くということでアーモンドチョコレートを沢山食べたら、そのようになったと他人に勧める人がいる。勧められた人には効果がなく、結局は膝関節の手術で対応した。ある者はアーモンドが膀胱がんに効くという情報を元に、係り付け医にしつこく聞いて嫌われた。膀胱がんを患ったのと併せて精神を病んでいる人である。
アーモンドの健康効果をAI は情報を集めて整理して次のように述べる。
アーモンドには、次のような効果が期待できます。血行の改善:アーモンドに含まれるビタミンEは血管を丈夫にし、神経や筋肉の正常な機能をサポートします。これにより、冷え性や肩こり、腰痛などの症状に効果的です。美肌や美髪:アーモンドに含まれるミネラルは、美肌や美髪に役立ちます。腸内環境の改善:アーモンドに含まれる食物繊維は、腸内環境を整え、便秘を防ぐ効果があります。血糖値の上昇抑制:食事と一緒にアーモンドを摂ると、血糖値の上昇を抑えるという研究結果があります。肝臓の機能改善:アーモンドには、肝臓の機能改善に効果的な栄養素が含まれています。特に、肝臓の機能が落ちると不足しやすいビタミンEや亜鉛が豊富に含まれています。アーモンドはナッツの中でも栄養価が高く、美容や健康、ダイエットに効果的と言われています。1日の摂取目安は、20~25粒(約30g程度)です。そんなアーモンドが含む栄養素の中でも、注目したい種類と期待できる効果を見ていきましょう。ビタミンE:シミ・シワ対策のアンチエイジング成分。不飽和脂肪酸:悪玉コレステロール減小・血圧低下。食物繊維:お腹の調子を整えるサポート。ビタミンB2:肌トラブルのケア。ミネラル:むくみ解消・貧血予防。
以上のことは機能性表示食品や健康食品が謳っている説明の引用に過ぎない。確かでないことを確かだと思わせる説明であり、AIの進展によって人は不確かな情報に踊らされる。
牛、鹿、羊、馬は草を食べて生きている。人は動物の肉を食べる。草を食べているだけで骨や筋肉がつくりあげられるのが草食動物である。南方のある人の種族はサツマイモだけを食べる。少しは肉を食べるといってもごくわずか。筋骨たくましい肉体をしている。
機械論的な生命観にの警鐘を鳴らすのが福岡伸一(生物学者、青山学院大学総合文化政策学部 教授、ロックフェラー大学客員教授)である。ある遺伝子(GP2)が欠けたノックアウトマウスが、その遺伝子がなくても、つまり一つ部品がなくても何とかそれを乗り越えて新しい状態をつくって生き続けることに生命の本質があると考えて回答を求めた。GP2ノックアウトマウスの繰り返し生育という実験を通じて福岡伸一は、生物は機械論的な機械的な仕組みによって生存しているのではないことを説明する。
福岡伸一への啓示となったのがルドルフ・シェーンハイマーの実験であった。何の特別さもない餌を、ネズミにある環境下で与え続けると、ネズミは1グラムの体重の増減もなく身体を入れ替えた。食べ物に含まれている原子や分子を自分自身の体を入れ替えたのである。身体の中では絶えず分解と合成が繰り返されて、食べ物は骨になり、肉になり、尻尾になった。シェーンハイマーその過程をアイソトープ(同位体)によって確かめた。これがシェーンハイマーの実験。
腸壁は数日で新しくなる。人の細胞は一年ほどで全て入れ替わる。今ある細胞が一年後にそのままで持ち越されるのではない。骨も肉も内臓も絶えず壊れ絶えず新しくなっている。
ルドルフ・シェーンハイマーの実験と自身のGP2ノックアウトマウスの繰り返し生育という実験を通じて福岡伸一が出した結論は、生物は生きる条件をゆるゆる、ヤワヤワにつくっておいて、自ら率先して分解し、つくり直して生きている、ということ。だからGP2ノックアウトマウスは子孫を残して生き続ける。
機能性食品として叫ばれるヒアルロン酸は口から摂っても分解されてしまう。コラーゲンは胃酸で分解される。酵素ドリンクは胃酸に触れると失活する。野菜を食べていれば青汁は要らない。
宇宙の大原則は形あるものは必ず形がない方向にしか動かない、ということ。あらゆるものは秩序から無秩序へと変化する。つまりエントロピー増大の法則によって支配されている。
人の身体は鉄人28号のように頑丈につくっておけば長く持つ(保つ)という造りにはなっていない。身体はエントロピー増大の法則に逆らって進むために、絶えず自身を壊してエントロピーを捨てていく。エントロピー増大の法則に負けて最後は寿命が尽きる。この際に子孫が残るという形によって、生命を手渡している。人は自分の中に秩序をつくり直して、このエントロピーの流れの中を進む。
人の身体に絶えず環境は入ってきて流れ出ている。養老孟司は「田圃をみて明日の自分の身体だと思うか」と謎の言葉を投げる。養老孟司と福岡伸一は虫好きで共通しており、呼ばれて一緒に講演をする。
計測でも科学でもない、それを装った数値を強調して人の健康に役立つように見せかけるメディア(媒体)からの情報に抗するために考えた事柄である。
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